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毒物劇物取扱者試験問題

問題50

次の急性中毒の治療方法に当てはまる物質として、適切なものはどれか。

【急性中毒の治療方法】
中毒症状が発現した場合には、至急医師による2-ピリジルアルドキシムメチオダイド（別名PAM、プラリドキシムヨウ化メチル）製剤又は硫酸アトロピン製剤を用いた適切な解毒手当を受ける。ただし、2-ピリジルアルドキシムメチオダイド製剤を使用しても効果が認められなかった場合には、硫酸アトロピン製剤にかえること。

	ジメチルー2,2-ジクロルビニルホスフェイト（別名DDVP）を含有する製剤
	クロルメチルを含有する製剤
	ヘキサクロルヘキサヒドロジメタノナフタリン（別名アルドリン）を含有する製剤
	有機シアン化合物を含有する製剤

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解　 説

選択肢(1)が適切です。

DDVP
別名：ジクロルボス、ジメチル－２，２－ジクロルビニルホスフェイト
劇物：（ジメチル－２、２－ジクロルビニルホスフェイト及びこれを含有する製剤）

分子式：C₄H₇Cl₂O₄P

ジクロルボス Dichlorvos(DDVP)は、日本では農薬取締法としては2012年4月に農薬登録が失効しており、現在、使用されていません。【農林水産省】

有機リン系化合物
中国、米国、豪州等においても殺虫剤としての農薬登録がある。【農林水産省】

(ジクロルボスは2008年1月に発生した中国冷凍ギョウザが原因と疑われる健康被害で有名になった)

【用途】
接触性殺虫剤（家庭用殺虫剤、衣類用殺虫剤のものもある。）

（〖参考情報〗バポナ殺虫プレート(1枚中ジクロルボス 21.39g)は、2012年5月31日に「劇薬」指定を解除されました。このため、購入に際し、譲受書は不要。第1類医薬品は継続。）

【毒性】
有機燐製剤の一種である。中毒症状はパラチオン製剤に類似。

【性状】
無色又はごく薄い黄色のエーテル様臭気のある透明な液体。
沸点140℃（20・Hg）。
比重1.42。蒸気圧1.2×10^-2・Hg（20℃）。
水にやや溶けにくい（20℃で水100mlに1g溶ける）。
有機溶剤に溶けやすい。
水中で徐々に加水分解する。

【漏 え い 時】
風下の人を退避させる。
漏えいした場所の周辺にはロープを張るなどして人の立入りを禁止する。
付近の着火源となるものを速やかに取り除く。作業の際には必ず保護具を着用し、風下で作業をしない。漏えいした液は土砂等でその流れを止め、安全な場所に導き、空容器にできるだけ回収し、そのあとを消石灰等の水溶液を用いて処理した後、多 量の水を用いて洗い流す。
洗い流す場合には中性洗剤等の分散剤を使用して洗い流す。この場合、濃厚な廃液が河川等に排出されないよう注意する。

【出 火 時】
（周辺火災の場合）
速やかに容器を安全な場所に移す。
移動不可能な場合には容器及び周囲に散水して冷却する。
（着火した場合）
消火剤、水噴霧等を用いて消火する。消火作業の際には必ず保護具を着用する。

【消火剤】
水、粉末、泡、二酸化炭素

暴 露・接 触 時
急性中毒と刺激性
（吸入した場合）
倦怠感、頭痛、めまい、嘔気、嘔吐、腹痛、下痢、多汗等の症状を呈し、はなはだしい場合には、縮瞳、意識混濁、全身けいれん等を起こすことがある。
（皮膚に触れた場合）
軽度の紅斑、浮腫等を起こすことがある。放置すると皮膚より吸収され中毒を起こすことがある。
（眼に入った場合）
粘膜を激しく刺激し、はなはだしい場合は、全身けいれん、縮瞳等を起こすことがある。
医師の処置を受けるまでの救急方法
（吸入した場合）
直ちに患者を毛布等にくるんで安静にさせ、新鮮な空気の場所に移す。
呼吸が困難な場合又は呼吸が停止している場合には、直ちに人工呼吸を行う。
（皮膚に触れた場合）
直ちに汚染された衣服やくつ等を脱がせ、付着部又は接触部を石けん水で洗浄し、多量の水を用いて洗い流す。
（眼に入った場合）
直ちに多量の水で15分間以上洗い流す。

【注 意 事 項】

1.アルカリで急激に分解すると発熱するので、分解させるときは希薄な消石灰等の水溶液を用いる。

2.中毒症状が発現した場合には、至急医師による２－ピリジルアルドキシムメチオダイド（別名PAM、プラドキシムヨウ化メチル）製剤又は硫酸アトロピン製剤を用いた適切な解毒手当てを受ける。ただし、２－ピリジルアルドキシムメチオダイド製剤を使用しても効果が認められなかった場合には、硫酸アトロピン製剤にかえること。

保 護 具

保護眼鏡、保護手袋、保護長ぐつ、保護衣、有機ガス用防毒マスク（火災時：空気呼吸器）

(2)クロルメチルを含有する製剤

(劇)塩化メチル
クロロメチル、クロルメチル
$\ce{CH3Cl}$

【注意事項】

塩化メチルは水に溶けると徐々に分解して塩酸を生成し、これが各種の金属を腐食するので水との接触を避ける。

(3)ヘキサクロルヘキサヒドロジメタノナフタリン（別名アルドリン）を含有する製剤

現在、農薬としての市販品はない。
1954年農薬登録, 1971年以降使用禁止, 1975年農薬登録失効, 1981年化審法第１種特定化学物質に指定, 農薬取締法(土壌残留性農薬)

化合物と解毒剤の関係をまとめました。

有機燐製剤 EPN、DDVP	①アトロピン ②PAM
有機弗素化合物	モノフルオール酢酸製剤
有機塩素化合物	バルビタール製剤
シアン化合物	①亜硝酸ナトリウム水溶液 ②チオ硫酸ナトリウム溶液
蓚酸塩類	カルシウム剤
硫酸タリウム	カルシウム塩
砒素化合物	①BAL ②ジメルカプロール ③水酸化マグネシウム
カルバメート剤	①硫酸アトロピン ②BAL

【大日本住友製薬】

地下鉄サリン事件で有名になった有機リン剤中毒解毒剤パムです。

【扶桑薬品工業】

これも地下鉄サリン事件で有名になりました。

総称名 硫酸アトロピン
一般名 アトロピン硫酸塩水和物, 硫酸アトロピン

効能・効果
経口用剤として
胃・十二指腸潰瘍における分泌ならびに運動亢進、胃腸の痙攣性疼痛、痙攣性便秘、胆管・尿管の疝痛、有機リン系殺虫剤・副交感神経興奮剤の中毒、迷走神経性徐脈及び迷走神経性房室伝導障害

夜尿症、その他の徐脈及び房室伝導障害

非薬物性パーキンソニズム

麻酔前投薬

硫酸アトロピンを術前投与するかと言えば、唾液分泌、気道分泌、胃液、膵液などの分泌や消化管運動の抑制などの目的で用いられつまり、副交感神経の働きを抑えます。

眼科用剤として

診断または治療を目的とする散瞳と調節麻痺

【第一三共株式会社】

効能・効果
ヒ素・水銀・鉛・銅・金・ビスマス・クロム・アンチモンの中毒

演習No.501 問題38

演習No.004 問題08

モノフルオール酢酸ナトリウムの中毒症状

アニリン・ニコチン・硝酸・ダイアジノンの中毒症状

EPNの中毒症状

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