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軌道・形・分極
共有結合の構造
1 塩化水素 $\ce{HCl}$
塩化水素 $\ce{HCl}$の立体動画 黄:$\ce{H}$、緑:$\ce{Cl}$
上の動画のように塩化水素 $\ce{HCl}$の形は”直線形”です。
H は1 族で原子番号が 1です。
Cl は17族で原子番号が 17です。
電子式は次のように表されます。
電子式は、非共有電子対が記載されています。
(ケクレ)構造式は以下のようになります。
構造式には、非共有電子対が記載されおらず、軌道を考察する混成軌道、分子の形、分極を考えるうえで非共有電子対(ローンペア)は重要となります。
ルイス(点電子)構造式は、電子式と構造式を足したようなものです。
塩化水素 $\ce{HCl}$の結合は、共有結合の単結合(H-Cl結合)で\(σ\)結合と呼ばれています。
すなわち、塩化水素は、$\ce{H}$の核と$\ce{Cl}$の核を結ぶ直線上で重なり合うので、\(σ\)結合を形成しています。
x、y、zの座標を入れてみました。
$\ce{H}$の 1s 軌道の電子1個と$\ce{Cl}$の 2pzの電子1個が\(σ\)結合しますから、下図は、p 軌道の基本的な軌道を表しているため、2pzが$\ce{H}$の 1sとの結合軌道に変更しなければなりません。
下図は、2pzが H の 1s との共有結合した軌道を表しています。
分子の形と分極を考えるときに、ローンペア(孤立電子対 lone pair electron)を確認します。
水素の電気陰性度は2.1、塩素の電気陰性度は3.0です。
塩化水素分子のように結合原子間に大きな電気陰性度の違いがある場合は、より電気陰性度が大きく電子を求引する力の強い原子の方に結合電子は偏って分布します。
塩化水素$\ce{HCl}$ 分子の共有電子対は、塩素 $\ce{Cl}$ に引き寄せられています。
その結果、塩素$\ce{Cl}$ 原子はわずかにマイナスの帯電し、これをデルタマイナス(\(δ−\))と表します。
水素$\ce{H}$ 原子のほうは、わずかにプラスの帯電し、これをデルタプラス(\(δ+\))と表します。
このような結合を極性結合といい、\(δ+\)、\(δ−\)を部分電荷と呼びます。
原子間の電気陰性度の差によって生じる電荷の偏りを極性、極性をもつ分子を極性分子といいます。
ローンペアの存在により共有電子対により多くの反発力が生じ、その結果、結合対が近づく傾向があります。
上の図の黄色軌道がローンペアですが、$\ce{HCl}$はローンペアを3つ持つ特徴を有しています。
2 メタン $\ce{CH_{4}}$
$\ce{CH_{4}}$の立体動画 青:炭素 黄:水素
H は1族で原子番号が1 です。
C は14族で原子番号が 6です。
電子式は次のようになります。
ケクレ構造式は次のようになります。
ルイス構造式はローンペアがありませんのでケクレ構造式と同じになります。
14族の炭素は価電子が4つです。
メタンの正四面体はエネルギー的にどれも等しい力関係で共有結合した分子で、4つの手にエネルギー的違いがないはずです。
メタンの特徴は以下の2つです。
・正四面体構造をもつ(4 本の等価な C-H 結合をもつ)
・非極性分子である
各軌道に入る配置図を次のように考えます。
もしこのレイアウトを採用すると、C 原子が H 原子と共有結合するために利用できる電子は、2px 軌道の電子と 2py 軌道の電子の 2 個となり、C-H 結合を 4 本つくることができません。
そこで次のようなレイアウトを考えます。
これならば,C-H 共有結合を 4 本つくることができます。
言い換えれば、2s 電子の1つが 2pz へ昇位させて 2s、2px、2py、2pz となり4つの結合を説明することができます。
しかし、2s の電子と 2p の電子とは等価なエネルギーをもたないので、4 本の等価な C-H結合をつくることはできません。
2sを使うものが 1 本と、2p を使うものが 3 本である 2 種類の C-H 共有結合ができてしまいます。
この矛盾を解消するためには、2s と 2p の部屋割りをやりなおして、数学的に等価な 4 部屋にしてやればよいわけです。
すなわち、次のような電子のレイアウトにするわけです。
このように,もともとは異なる性質をもっていた軌道を合体させて再配分することによってつくられた軌道を混成軌道と呼びます。
メタンの L 殻においては、s 軌道が 1 個と p 軌道が 3 個組み合わさっているので、sp3混成軌道と呼ばれます。
sp3混成は、1本の s 軌道と3本の p 軌道からσ結合(単結合の共有結合)を形成します。
電子対の数が4つの場合、四面体形を形成します。
四面体形では、電子対は互いに反発しあい空間的にできるだけ遠い位置を占める形になります。
sp3混成軌道は、球形のs軌道とダンベル型のp軌道が組み合わさった軌道なので、ダンベルの片方が萎んでもう片方が膨らんだ形の軌道をしています。
sp3混成軌道はエネルギー的に等しい軌道が4つできてそれが4つの方向に広がっている形をしているのでC-H結合の結合角が109.5度の正四面体になります。
水素原子は原子番号が1番なので電子軌道で表すと、1s 軌道に電子が1個入っている状態です。
つまり水素原子は1s軌道そのものです。
水素原子の 1s 軌道の電子と炭素原子のsp3混成軌道の電子をお互いに出し合って共有結合が作られています。
それが4つできることによって結合力がどれも等しい同じエネルギーを持った状態で共有結合しているのです。
これが 4 つ存在し、互いに電子の反発を避けるために正四面体ができる方向に分散するので、メタンの形は次のようになります。
参考までに、破線-くさび形表記でメタンを表しました。
メタン$\ce{CH_{4}}$の sp3 混成軌道は4つの等価なσ結合です。
炭素原子では x 軸が分子軸である場合は、px 軌道同士や、s 軌道と px軌道の重なりで\(σ\)結合が形成されます。
\(σ\)結合では、片方の原子を固定したまま、もう一方の原子を回転しても結合は変化しません。
そのためσ結合は結合回転可能です。
上の絵のように\(σ\)結合は2つの原子の間の結合軸に結合電子が分布している結合です。
また、\(σ\)結合の結合電子を\(σ\)電子、入っている軌道を\(σ\)軌道といいます。
まとめると、共有結合は電子軌道の重なりによって構成され、σ結合とπ結合、δ結合という分類があります。
2つの原子の間の結合軸に結合電子の軌道の重なりが分布している結合ですから\(σ\)結合となります。
フントの規則電子はできるだけスピン平行になるように軌道に入る。
例)2p軌道に電子を配置する場合、許される限りスピンを平行にして異なる軌道に入る。 2px、2py、2pzの順序とは必ずも確定されていない $\ce{CO_{2}}$で2pyに注意 |
3 水 $\ce{H_{2}O}$
水 $\ce{H{_2}O}$の立体動画 赤:$\ce{O}$ 白:$\ce{H}$
上の動画のように水 $\ce{H{_2}O}$の形は”折れ線形”です。
H は 1族で原子番号が 1 です。
O は 16族で原子番号が 8 です。
電子式は次のようになります。
ケクレ構造式は次のようになります。
ルイス構造式は次のようになります。
16族の酸素は価電子が6つです。
主殻のK殻の副殻 1s 軌道には上向き↑スピンの電子、下向き↓スピンの電子、合計2個の電子が存在します。
L殻の 2s 軌道に同様に2個の電子が入ります。
p 軌道は、px、py、pz 軌道があり、まず px に一つ↑そして、pyに↑と電子が入ります(フントの規則)。
pxに↑↓といっぺんに2個の電子が入ることはありません。
2 本の O-H 共有結合をつくるためには、次のような電子のレイアウトをとることになります。
これならば,O-H 共有結合を 2 本つくることができる。
しかし、2s の 電子と 2p の電子とは等価なエネルギーをもたないので、2 本の等価な O-H 結合をつくることはできません。
2s を使うものが 1 本と、2p を使うものが 3 本の 2 種類の O-H 共有結合ができてしまうためです。
この難題を解消するためには、2s と 2p の部屋割りをやりなおして、数学的に等価な 4 部屋にしてしまいます。
すなわち、次のような電子のレイアウトにするわけです。
2sp3の意味は、2はL 殻で s 軌道からの部屋が1つ、p 軌道からの部屋が3つの合計4つの部屋があることを示します。
このように、もともとは異なる性質をもっていた軌道を合体させて再配分することによってつくられた軌道を混成軌道と呼びます。
酸素の L 殻に おいては、s 軌道が 1 個と p 軌道が 3 個組み合わさっているので、sp3混成軌道(四面体型)と呼ばれます。
2s、 2px 、 2py 、 2pzの 4 軌道を、等価な 4 本の共有結合ができる状態に分けなおした形になります。
水分子 $\ce{H{_2}O}$においては、酸素 $\ce{O}$の sp3混成軌道 2つと、水素 $\ce{H}$ の 1s 軌道とが重なり合うことによって、2 本の等価な共有結合をつくります。
水分子 $\ce{H{_2}O}$ の構造は次のようになります。
酸素原子上にsp3混成軌道に含まれる形で残るローンペア(孤立電子対 lone pair electron)はO-H結合の共有電子対と電気的な反発を起こすので結合角が狭まるが、水分子の場合は、酸素原子上にローンペアが2つセットになって存在しているから両脇から共有電子対押されて結合角は104度になります。
すなわち、分子は電子の反発を一番抑える形になり、折れ線形になります。
$\ce{O}$原子の直交した二つの 2p 軌道と二つのH原子の1s軌道の重なりが大きくなるように結合が生じたからです。
ルイス構造式は、形を示すことはできませんが、非共有電子対(lone pair electron)を 2 組を的確に表示しています。
4 アンモニア $\ce{NH_{3}}$
アンモニア $\ce{NH_{3}}$の立体動画 青:$\ce{N}$ 黄:$\ce{H_{3}}$
H は 1族で原子番号が 1 です。
N は 15族で原子番号が 7 です。
電子式は次のようになります。
ケクレ構造式は次のようになります。
ルイス構造式は次のようになります。
15族の窒素は価電子が5つです。
主殻のK殻の副殻 1s軌道には上向き↑スピンの電子、下向き↓スピンの電子、合計2個の電子が存在します。
L殻の2s軌道に同様に2個の電子が入ります。
p 軌道は、px、py、pz 軌道があり、まず pxに一つ↑そして、pyに↑と電子が入ります(フントの規則)。
px に↑↓といっぺんに2個の電子が入ることはありません。
3 本の N-H 共有結合をつくるためには、次のような電子のレイアウトをとることになります。
これならば,N-H 共有結合を 3 本つくることができる。
しかし、2s の 電子と 2p の電子とは等価なエネルギーをもたないので、3 本の等価な N-H 結合をつくることはできません。
2s を使うものが 1 本と、2p を使うものが 3 本の 2 種類の N-H 共有結合ができてしまうためです。
このためには、2s と 2p の部屋割りをやりなおして、数学的に等価な 4 部屋にしてしまいます。
すなわち、次のような電子のレイアウトにするわけです。
2sp3の意味は、2は L 殻で s 軌道からの部屋が1つ、p 軌道からの部屋が3つの合計4つの部屋があることを示します。
このように、もともとは異なる性質をもっていた軌道を合体させて再配分することによってつくられた軌道を上と同様に混成軌道と呼びます。
窒素の L 殻に おいては、s 軌道が 1 個と p 軌道が 3 個組み合わさっているので、sp3 混成 軌道と呼ばれます。
2s、 2px、 2py、 2pzの 4 軌道を、等価な 4 本の共有結合ができる状態に分けなおした形になります。
水分子 $\ce{NH{_3}}$においては、窒素 $\ce{N}$の sp3 混成軌道 3つと、水素 $\ce{H}$ の 1s 軌道とが重なり合うことによって、3 本の等価な共有結合をつくります。
アンモニア $\ce{NH{_4}}$ の構造は次のようになります。
ローンペアは電子 2 個分の電荷をもち、これを中和する原子核が近くにないので、アンモニア分子 $\ce{NH_{3}}$は電気的に分極します。
すなわち、ローンペアはN-H結合を作っている共有電子対と電気的な反発を起こすので結合角が狭まって107度となります。
5 二酸化炭素 $\ce{CO_{2}}$
二酸化炭素 $\ce{CO_{2}}$の立体動画 青:炭素、赤:酸素
C は 14族で原子番号が 6です。
O は 16族で原子番号が 8 です。
電子式は次のようになります。
ケクレ構造式は次のようになります。
ルイス構造式は次のようになります。
14族の炭素は価電子が4つです。
16族の酸素は価電子が6つです。
電子式から考えると、炭素の手は4本で結合すべき酸素は2つです。
混成軌道を確認しておきましょう。
sp 混成軌道 | 1つのs軌道と1つの p 軌道が混ざることにより作られた軌道 |
sp2混成軌道 | 1つの s 軌道と2つの p 軌道が混ざることにより作られた軌道 |
sp3混成軌道 | 1つのs軌道と3つの p 軌道が混ざることにより作られた軌道 |
電子式の中心部の $\ce{C}$ 原子は sp 混成軌道をもち、両端の $\ce{O}$ 原子は sp2 混成軌道を持ちます。
これらをくみあわせて $\ce{CO_{2}}$分子を組み立てています。
3 個の原子の電子レイアウトとそれぞれの原子における混成軌道のイメージを下図 に示します。
それぞれの構成原子における原子軌道は、C 原子は sp 混成軌道および 2 個の p 軌道をもち、さらにO 原子は sp2 混成軌道および 1 個の p 軌道をもちます。
軌道の重なり合いによる二酸化炭素分子の構築の結果、C 原子は 2 組もつ p 軌道をそれぞれ別の $\ce{O}$ 原子との\(π\)結合に用いられます。
二酸化炭素の両端の酸素原子は sp2 混成で、結合角ないしは非共有電子対の成す角はほぼ120°です。
両端原子の平面は互いに直交します。
共有結合をまとめました。
σ結合 | 2つの原子の間の結合軸に結合電子が分布している結合がσ結合 ⅰ. s軌道どうしが重なるとき ⅱ. p軌道どうしが頭と頭で重なるとき ⅲ. s軌道とp軌道が重なるとき 節面なし |
π結合 | 結合軸に対して直角方向の p 電子は結合軸からみて上部と下部に電子雲が広がっているが、この両方の電子雲がくっつくことで重なり形成される結合がπ結合 ⅰ. p軌道どうしが側面と側面で重なるとき 節面1つ |
δ結合 | 特に遷移金属原子間に見られる多重結合の一つで、結合方向をz軸とすると、$\ce{d_{x-y }}$軌道と$\ce{d_{x-y}}$軌道の間や$\ce{d_{x^{2}-y^{2}}}$軌道と$\ce{d_{x^{2}-y^{2}}}$軌道の間で形成される結合 節面2つ |
σ結合とπ結合で表したものを下に示します。
節面:電子の存在確率が極めて低い軌道
節あるいは節面の一例を示しておきます。
最後にσ結合1つとπ結合1つの二重結合を理解するために図を用意しました。
右半分を考えると、
Cの2spとOの2sp2でσ結合ができる
Cの2pzとOの2pzでπ結合ができる
よってCとOの結合は、σ結合とπ結合による二重結合となり、C=Oと表せることがわかりました。
問題
原子間の共有結合には極性があるが、分子全体としては打ち消されている無極性分子として、適切なものは次のうちどれか。
選択肢(4)が適切です。
異なる種類の原子が共有結合すると、共有電子対は電気陰性度は大きい原子の方へ引きつけられます。
塩化水素HClの場合、共有電子対は電気陰性度のより大きなCl原子の方へ引きつけられます。
その結果、Cl原子は負(δ–)に、H原子は正(δ+)に帯電する。
このように、原子間の電気陰性度の差によって生じる電荷の偏りを極性といい、極性を持つ分子を極性分子といいます。
二酸化炭素の C と O の電気陰性度には差があるため、2原子間で極性が生じるのは予想がつきます。
しかし、二酸化炭素の分子中にC=O結合が 2つあることに最大のポイントです。
同じ結合が左右対称に存在するため ”電気的な偏りが左右で打ち消されてしまう”います。
その結果、CとOの間に極性は生じるものの、分子全体では無極性というとても重要な結果になります。
他にもメタン $\ce{CH_{4}}$ や三フッ化ホウ素 $\ce{BF_{3}}$などの分子は分子全体で無極性になっています。
CとHの電気陰性度を比較するとCの方が大きいため原子間で極性が生じます。
しかし、$\ce{CH_{4}}$ の形は正四面体形であり、したがって分子全体では無極性となります。
BとFの電気陰性度を比較するとFの方が大きいため原子間で極性が生じます。
しかし、$\ce{BF_{3}}$ の形は正三角形であり、したがって分子全体では無極性となります。
H原子とO原子の電気陰性度を比較すると、Oの方が大きい。
したがって、原子間に極性を生じています。
また$\ce{H_{2}O}$ は分子の形が折れ線型なので、分子全体で極性を打ち消すことができない。
したがって、$\ce{H_{2}O}$ 極性分子です。
アンモニア$\ce{NH_{3}}$ も極性分子です。
N原子とH原子の電気陰性度を比較すると、Nの方が大きいため原子間に極性が生じており、$\ce{NH_{3}}$ の形は三角錐形なので極性を打ち消すことはできません。
極性と分子の形まとめ
---------------------------- 形 --------極性
塩化水素 直線形 あり
メタン 正四面体 なし
三フッ化ホウ素 正三角形 なし
二酸化炭素 直線形 なし
アンモニア 三角錐形 あり
水 折れ線形 あり
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