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毒物劇物取扱者試験問題
演習No.006
問題 34
解 説
今回のテーマは、劇物であるピクリン酸(ぴくりんさん)の鑑識法に関する問題です。
多くの都道府県で正解が(1)とされている点に着目し、試験特有の知識として、最大限丁寧に解説します。
毒物劇物取扱者試験特有の知識に関する警鐘
この問題の解釈は、一般の高校化学や大学化学で学ぶ知識とは異なります。
一般化学において、ピクリン酸の有名な鑑識法は「アルカリ性で赤色を呈する反応」(ヤフィの反応 Jaffe reaction)です。
しかし、この試験では、特定のテキスト(『新毒物劇物取扱の手引き』など)に準拠した知識が正解とされる傾向があります。
したがって、(1)の反応は「ピクリン酸の鑑識法として、この試験のために記憶すべき特有の知識」であると割り切って覚える必要があります。
出題のねらい:ピクリン酸の特定の反応生成物による識別
この問題は、劇物であるピクリン酸を、さらし粉のような試薬と反応させた際に生じる刺激臭(クロルピクリン)によって識別できるかを確認するためのものです。
毒物・劇物の分類
- ピクリン酸は、劇物に指定されています。
(1) 水溶液にさらし粉溶液を加えて煮沸すると、刺激臭を発する。
選択肢 (1)は、適切です。
- 理由(試験特有の知識):
- ピクリン酸の化学構造は、フェノール(水酸基$-\text{OH}$を持つ)に多くのニトロ基が付いた形をしています。
ピクリン酸をさらし粉(次亜塩素酸塩)と反応させて煮沸すると、分解とともに塩素化が起こり、クロルピクリン($\text{CCl}_3\text{NO}_2$、別名:催涙剤)という物質が生成するとされています。 (酸化・塩素化反応)- クロルピクリンは非常に強い刺激臭を持つため、この刺激臭の発生をもってピクリン酸を識別する方法として、多くの毒劇物試験で鑑識法として採用されています。
- (補足) 出題者は、この刺激臭の原因物質がクロルピクリンであることを受験者に推測させるために、あえて物質名を伏せて「刺激臭を発する」という表現に留めていると推測されます。
- 歴史的背景: この酸化・塩素化反応は、第一次世界大戦中に毒ガス兵器として使用された歴史を持ち、非常に危険な化学反応として認識されています。
(2) 熱すると酸素を生成して塩化物となる。
選択肢 (2)は、不適切です。
- 理由:
- 酸素生成:これは過酸化水素や過マンガン酸カリウム(劇物)などの酸化剤の分解反応の記述に近いです。
- 塩化物となる:
ピクリン酸($\text{C}_6\text{H}_3\text{N}_3\text{O}_7$)は塩素を含んでいないため、分解して塩化物を生成することはありません。 また、ピクリン酸は熱や衝撃で爆発の危険があります。 - 不適切選択肢に該当する毒物・劇物例:過マンガン酸カリウム(劇物)
(3) デンプンと反応すると藍色を呈し、これを熱すると退色し、冷えると再び藍色となる。
選択肢 (3)は、不適切です。
- 理由:これは、沃素(ようそ、$\text{I}_2$)の最も有名な鑑識法(ヨウ素デンプン反応)を正確に説明しています。
- 不適切選択肢に該当する毒物・劇物例:沃素(劇物)
(4) アルコール性の水酸化カリウムと銅紛とともに煮沸すると、黄赤色の沈殿を生成する。
選択肢 (4)は、不適切です。
- 理由:これは、塩素などのハロゲンを含む有機化合物(例:四塩化炭素、クロロホルムなど)を検出する反応の説明に近いものです。ピクリン酸は塩素を含まないため、この鑑識法はピクリン酸には適用できません。
- 不適切選択肢に該当する毒物・劇物例:四塩化炭素(劇物)、クロロホルム(劇物)
まとめ総括
この問題の適切な記述は、選択肢 (1) です。
【ピクリン酸の鑑識法に関する重要ポイント】
- 分類:劇物(かつ爆発性あり)。
- 試験特有の鑑識法:さらし粉溶液を加えて煮沸すると、クロルピクリン生成による強い刺激臭を発する。
- 一般化学の知識:アルカリ性の溶液中で赤色(または橙赤色)に呈色する反応も有名。
毒物劇物取扱者試験では、(1)の「刺激臭を発する」が正解となることが多いです。
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