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毒物劇物取扱者試験問題
硫化水素による系統分析2
問題
カドミウムイオン$\ce{Cd^{2+}}$、 鉄(Ⅲ)イオン$\ce{Fe^{3+}}$、鉛イオン$\ce{Pb ^{2+}}$を含む混合溶液について
以下の操作を行った。A~Bに当てはまる字句の組み合わせとして、適切なものはどれか次のうちどれか。
ただし、混合液中には上記のイオン以外含まれていないものとする。
この混合溶液に塩酸(塩化水素水溶液)を十分に加えたところ、白色の沈殿を生じた。この沈殿物の化学式は、(A)である。これをろ過し、沈殿物とろ液を完全に分けた。
さらにこのろ液に硫化水素を通じたところ、黄色の沈殿物を生じた。この沈殿物の化学式は、(B)である。
東京都
解 説
選択肢(4)が適切です。
鉛イオンを含む水溶液に希塩酸を加えると、白色の沈殿物$\ce{PbCl2}$が生じます。
もう少し詳しく述べると、希塩酸$\ce{HCl}$を加えると、塩化物イオン$\ce{Cl^-}$ によって、沈殿が生じます。
$\ce{Pb^2+ + 2Cl^{-} → PbCl2 ↓}$(白)
酸性下で、イオン化傾向が小さい右側の試料の沈殿を狙います。
カドミウムイオンの水溶液に硫化水素$\ce{H2S}$を通じると、黄色の沈殿物$\ce{CdS}$を生じます。
もう少し詳しく述べると、希塩酸$\ce{HCl}$を加えたあとに、硫化水素$\ce{H2S}$を吹き込むことで、硫化物イオン$\ce{S^2-}$ によって、カドミウムイオン$\ce{Cd^2+}$を沈殿として分離することができます。
$\ce{Cd^2+ + S^{2-} → CdS↓}$(黄色)
さらに代表例では、
$\ce{Cu^{2+} + S^{2-} → CuS↓}$(黒)
$\ce{Sn^{2+} + S^{2-} → SnS↓}$(褐)
アルカリ金属イオン$\ce{Na^+}$は硫化物の沈殿は生じません。アルカリ金属イオンは処理工程最後まで残ります。
処理工程最後の一歩手前まで残るのが、アルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンです。
金属の炎色反応
Li
Na
K Cu
Ba Ca
Sr
参考1
イオン化傾向
Li+ K+ Ca2+ Na+
Mg2+ Al3+ Zn2+ Fe3+ Ni2+
Sn2+ Pb2+
( H ) Cu2+ $\ce{Hg2^2+}$ Ag+
Pt Au
Li K Ba Sr Ca Na Ma Al Zn Cr Fe Cd Co Ni Sn Pb H Cu Hg Ag Pt Au
Li K Ba Sr Ca Na Mg Al Mn Zn Cr Fe Cd Co Ni Sn Pb H Cu Hg Ag Pt Au
参考2 沈殿の覚え方(原則・一般的に)
⓪ アルカリ金属、アンモニウムイオン$\ce{NH4^+}$ 、硝酸イオン$\ce{NO3^-}$は、沈殿しない。
1価のイオンは沈殿を作りづらい傾向にあります。
①塩化物イオン$\ce{Cl^-}$は下記の三つ以外は沈殿しません。
$\ce{Ag^+} \quad \ce{Pb^2+} \quad \ce{Hg2^2+} $
銀の 生 ハゲ は白色
※$\ce{PbCl2}$は熱水に溶けます。
金属イオン 酸 $\ce{Ag^+ \quad Pb^2+} \quad \ce{HCl(Cl^{-})}$ 銀杏 来る |
②硫酸イオン$\ce{SO4^2-}$は、$\ce{Pb^2+}$、アルカリ土類金属以外は沈殿しない。
$\ce{ Ba^2+} \quad \ce{Ca^2+} \quad \ce{Pb^2+}$
白なんて バ カ な
金属イオン 酸 $\ce{Ba^2+ \quad Ca^2+ \quad Pb^2+ \quad H2SO4(SO4^{2-}) }$ 馬鹿な硫酸! |
③硫化物イオン$\ce{S^2-}$は、イオン化傾向$\ce{Al}$以上(右側)以外沈殿します。
[基本色] 言おう、ブラック(硫黄、黒)
中性・塩基性下
$ (\ce{Mn}) \quad \ce{Zn} \quad \ce{Fe} \quad (\ce{Cd}) \quad \ce{Ni} \quad \ce{Sn} \quad \ce{Pb} \quad \ce{Cu} \quad \ce{Hg} \quad \ce{Ag} $
酸性下
$ \ce{Sn} \quad \ce{Pb} \quad \ce{Cu} \quad \ce{Hg} \quad \ce{Ag} $
基本は黒色 $\ce{CuS}$
$\ce{ZnS}$ 白(ずんしょう) $\ce{CdS}$ 黄色(could be yellow) $\ce{MnS}$ 淡赤色(まんすタンカ) $\ce{SnS}$ 褐色
④弱酸・クロム酸イオン$\ce{CrO4^2-}$は、⓪以外沈殿します。
$\ce{Ag^+} \quad \ce{Ba^2+} \quad \ce{Pb^2+}$
銀 バ ナ は赤黄黄
⑤弱酸・炭酸イオン$\ce{CO3^2-}$は、⓪以外沈殿します。
アルカリ金属、$\ce{NH4^+}$以外はほぼ沈殿を作ります。
(ここまでの時点で系統分離は、イオン化傾向の右側の試料は沈殿が片付いているので、アルカリ土類金属イオンを沈殿させる目的で炭酸イオンを用いる)
金属イオン 酸 $\ce{Ba^2+ \quad Ca^2+ \quad H2CO3(CO3^{2-}) }$ バカ炭酸! |
⑥塩基($\ce{OH^-}$) $\ce{NaOH}$、$\ce{NH3}$等は、アルカリ金属、アルカリ土類金属以外沈殿します。
$ \ce{Al} \quad \ce{Zn} \quad \ce{Fe} \quad \ce{Ni} \quad \ce{Sn} \quad \ce{Pb} \quad \ce{Cu} $
例 $\ce{Al(OH)3}$
※$\ce{NH3 + H2O \rightleftarrows NH4^+ + OH^-}$
⑦過剰$\ce{NaOH}$
$\ce{Al^3+} \quad \ce{Zn^2+} \quad \ce{Sn^2+} \quad \ce{Pb^2+} $
あ あ すん なり 溶ける
⑧過剰$\ce{NH3}$
$\ce{Ag^+} \quad \ce{Cu^2+} \quad \ce{Zn^2+} \quad \ce{Ni^2+} $
銀の ド ア に 沈殿消失
亜鉛イオン$\ce{Zn^2+}$は、過剰の $\ce{NH3}$ 水と $\ce{NaOH}$ 水溶液の両方に溶解する金属陽イオンです。
参考3
硫化水素による系統分離の原理
流れ(試料は代表的な金属陽イオンとします)
①酸性にする
②硫化物沈殿(酸性)
③塩基性にする
④硫化物沈殿(塩基性)
①試料に$\ce{HCl}$を加える($\ce{Ag^+ , Pb^2+ , Hg2^2+}$を沈殿させる)
(1)沈殿…$\ce{AgCl}$、$\ce{PbCl2}$
確認 塩化銀はアンモニアに溶け塩化鉛は熱水で溶ける
(2)ろ液→②へ続く
②$\ce{H2S}$(酸性下)($\ce{ Sn^2+ , Cu^2+ , Cd^2+ }$を沈殿させる )
(1)沈殿…$\ce{SnS}$ 褐色、$\ce{CuS}$ 黒色、$\ce{CdS}$ 黄色
(2)ろ液→③へ続く
③溶液をリセット後、$\ce{NH3}$(3価の金属陽イオン$\ce{Al^3+ , Fe^3+ , Cr^3+}$を水酸化物として沈殿させる)※
(1)沈殿…$\ce{Al(OH)3}$ 白色、$\ce{Fe(OH)3}$ 赤褐色
確認 水酸化アルミニウムは強塩基性で再び溶解
(2)ろ液→④へ続く
※煮沸して$\ce{H2S}$を飛ばします。$\ce{H2S}$で$\ce{Fe^3+ → Fe^2+}$となっているので、酸化剤$\ce{HNO3}$で$\ce{Fe^2+ → Fe^3+}$と戻します(沈殿させやすくなる)。
ここで$\ce{NH3}$を用いた理由は、$\ce{NaOH}$だと$\ce{Al}$まで溶けしまいます(沈殿させれない)。
$\ce{Zn^{2+}}$は過剰の$\ce{NH3}$水によって一度生じた水酸化亜鉛$\ce{Zn(OH)2}$の白色沈殿が溶けて、
テトラアンミン亜鉛(Ⅱ)イオン$\ce{[Zn(NH3)4]^{2+}}$になっています。
次の段階で硫化水素$\ce{H2S}$を通じると、硫化亜鉛$\ce{ZnS}$の白色沈殿を生じます。
$\ce{Zn^{2+} + S^{2-} → ZnS ↓}$
④$\ce{H2S}$(塩基性下)($\ce{Zn^2+ , Ni^2+ , Mn^2+ , Co^2+}$ を沈殿させる)
(1)沈殿…$\ce{ZnS}$ 白色、$\ce{MnS}$ 淡桃色
(2)ろ液→⑤へ続く
⑤$\ce{ (NH4)CO3}$ (アルカリ土類金属イオンを沈殿させる・$\ce{Mg^{2+}}$はまだ溶けている)
(1)沈殿…$\ce{BaCO3}$ 白い炭酸塩、$\ce{CaCO3}$ 白い炭酸塩
(2)ろ液→$\ce{K^+}$、$\ce{Na^+}$ 炎色反応
2族・アルカリ土類金属
Be Mg ・ Ca Sr Ba Ra
※ キャッスル=お城
1族・アルカリ金属
H ・ Li NaK、 RbCsFr
あまり出題されることはありませんが、
$\ce{OH^-}$ は、アルカリ金属、アルカリ土類金属以外は沈殿します。
$\ce{Ag^+ + OH^- → AgOH ↓}$
$\ce{2AgOH\downarrow \quad → Ag2O\downarrow + H2O}$
銀イオン$\ce{Ag^+}$を塩基性水溶液($\ce{OH^-}$)に入れると$\ce{AgOH}$が生成されますが、一瞬にして$\ce{Ag2O}$に変化してしまいます。
参考4
$\ce{H2S}$による硫化物の沈殿
金属の硫化物は、水溶液のpHにより、沈殿するものと、しないものに分けられます。
酸性、中性、塩基性のいずれでも沈殿 | $\ce{Cu^2+ →CuS}$(黒色) $\ce{Ag^+ →Ag2S}$(黒色) $\ce{Pb^2+ →PbS}$(黒色) $\ce{Hg^2+ →HgS}$(黒色) $\ce{Cd^2+ →CdS}$(黄色) |
中性、塩基性のときに沈殿 | $\ce{Fe^2+ →FeS}$(黒色) $\ce{Zn^2+ →ZnS}$(白色) $\ce{Ni^2+ →NiS}$(黒色) 注意:$\ce{Fe^3+}$は還元されて$\ce{Fe^2+}$となり、$\ce{FeS}$として沈殿 |
沈殿を生じない (炎色反応で確認) |
$\ce{Li^+}$(赤色) $\ce{Na^+}$(黄色) $\ce{K^+}$(赤紫色) $\ce{Ca^2+}$(橙赤色) $\ce{Sr^2+}$(深赤色) $\ce{Ba^2+}$(黄緑色) |
硫化水素$\ce{H2S}$
・$\ce{FeS + 2HCl → H2S + FeCl2}$ で発生
$\ce{FeS + H2SO4 → H2S + FeSO4}$ でも発生
今日では実験用途では工業的に生産されたガスボンベを利用します。
・人体に有害
・可燃性、腐卵臭無色毒性ガスではあるが毒物及び劇物取締法の対象外
雑談
金属陽イオンの系統分離は、無機化学の花形と呼ぶひともいるようです。
金属陽イオンの系統分離は、沈殿生成反応、イオン化傾向、炎色反応と無機化学の総合知識が問われるようで、難しですね。
毒物劇物取扱者試験は、分かっている人にとっちゃこのような問題は簡単なのでしょうが、化学初心者には難し過ぎます。
くじけそうになる問題ですが、繰り返して解いて慣れていきましょう。
化学苦手者(当website管理人含む)よ、がんばろう。
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